富山大学附属図書館研修会 講演「図書館資料をモノから考える―媒体・記録材料とその周辺」報告


平成24年5月25日(金)、富山大学附属図書館(中央図書館)2階プレゼンテーションゾーンで第2回富山大学附属図書館研修会「図書館資料をモノから考える―媒体・記録材料とその周辺」を開催いたしました。

前回(平成24年2月16日)、「蔵書こそは図書館の切り札」をテーマにお話いただいた東京大学経済学部資料室の小島浩之先生を再びお招きし、「蔵書(情報)の保存、充実、特色化、公開といった、間接サービスの充実が真の利用者サービスに繋がる」という前回の講演での主張を踏まえ、資料保存、とりわけ記録媒体(書かれるモノ)・記録材料(書くモノ)についてお話をいただきました。

なお、当日は県外からの参加者も含め、学内外から29名の方の参加があり、このテーマに対する関係者の関心の深さがうかがえる研修会となりました。
以下に講演の内容を簡単に報告させていただきます。

図書館資料のなかでも、特に歴史的史料のような一次資料は、それ自体を将来へ残すことが図書館の重要な役割ですが、資料保存に必要な知識・技術は図書館職員の間に共有されていないのが現状です。人間の「アンチエイジング」では、まずヒトについて知ることが大切なように、モノを残すためにはモノ自体を知ることが必要である、というのが今回の講演の趣旨でした。

最初に、パピルス、粘土板、羊皮紙(パーチメント)、簡牘(かんとく)、布帛(ふはく)、石、紙、フィルム、磁気媒体、電子媒体、といった記録媒体、それから墨書、インク、刻石、印刷(凸版・凹版・孔版・平版)、複写( 青写真・電子複写)、カーボン、蒟蒻版などの記録材料(方法)について、画像や実物サンプルとともに解説していただきました。

続いて、世界の各地域で用いられる言語や文字の特徴に応じて、歴史的に使用されてきた記録媒体・記録材料の分類について説明があり、記録媒体として身近な「紙」の話題へと入っていきました。

紙の原料、化学組成についてのお話では、原料の木から繊維だけを取り出して作られる和紙と異なり、現代の紙は木材を丸ごと使うこと、紙に含まれるリグニンは紫外線と反応して酸を発生させること、それはバニリン酸といって、バニラと似た匂いがすることなど、とても興味深い内容でした。

参加者には、楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)・麻・竹を素材とした和紙が配布され、色・厚み・手 触りなど外見の特徴や簾目(すのめ)・糸目・刷毛目・板目のあるなしについて実物に見たり触れたりして比較し、先生からは、なぜそのような特徴が出てくるのかをわかりやすく教えていただきました。

最後に、紙を含めて図書館資料は工業製品の複合体であるということ、技術の進化は激しいこと、改良されれば劣った技術はすたれてしまうことから、蔵書の適切な保存のためには、モノについてよく知ることが重要としめくくられました。

約90分の講演のあとのディスカッションの時間では、参加者から、スペインの紙や製紙についての意見や、マイクロ資料の劣化(ビネガーシン ドローム)についての質問などがあり、とても興味深い内容の研修会だったとの声をいただきました。

なお、本日の資料はこちら(http://hdl.handle.net/10110/8887)から閲覧することができます。どうぞご覧ください。

富山大学附属図書館では、今回の研修で得た知識を参考に、所蔵する資料の効果的な保存と活用の方法を探っていこうと考えています。関係者のご支援をよろしくお願いいたします。